覚える技術
by ア ルベルト オリヴェリオ, Alberto Oliverio, 川 本 英明

脳科学界の重鎮であるアルベルト・オリヴェリオが、最新の研究成果を用いて記憶のメカニズムを説き明かした注目の1冊。単に記憶のメカニズムを解明するだ けでなく、記憶力向上の方法をもあわせて紹介した、画期的な1冊である。

    記憶のメカニズムに関しては、記憶が「手続き記憶」「陳述記憶」「自伝的記憶」などのタイプに分かれるという基礎知識からスタートして、神経科学、認知心 理学、実験心理学、神経心理学など幅広い分野の知見を取り入れながら論を展開している。なぜ「のどまで出そうな言葉」が思い出せないのか、忘れたくても忘 れられない思い出があるのはなぜか、年をとると記憶力が衰えるのはなぜかなど、普段だれもが抱いているような疑問を解明してくれている。

    記憶力向上の方法は、「イメージ化と視覚化」「精密コード化」「『場所』のメソッド」といった確立した手法から、運動による脳の血流促進や精神集中、睡眠 法といったアドバイスまでじつに多彩で、12の「記憶テスト」でそのトレーニングの一端を紹介している。科学や歴史を勉強する学生に対して、ただ繰り返す だけの勉強法ではなく「疑問を抱く」「比較対照する」「論理の筋道をたどる」「類推を働かす」などの方法をすすめたり、記憶力が衰えはじめた老人に対し て、「暗唱学習」をすすめたり、役立つアドバイスも多い。

   専門用語が多いものの、文学や映画をはじめとする多彩なエピソードのおかげで、最後まで飽きずに読めてしま う。テーマも幅広く、想像力や知的好奇心を存分にかき立ててくれる。(棚上 勉)

ぼけないためにも
  脳神経科学の革命的な進歩が著しい今日であるが。記憶は人にとって、
はるかギリシャ時代からの人類共通のテーマであり続けている。脳神経の専門家はいまアルツハイマーなど病がなぜ起きるのか神経伝達機能のレヴェルでの解明 に近づきつつある。科学的にしかも読みやすい普段使う記憶法をとりあげたりと、なかなか粋な計らいの本です。
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